2025/06/05 21:01
ここ数ヶ月の間で、なんだか私の周りで「旅」というワードが飛び交うようになった。
何がきっかけだったのかはよく分からないけれど、周囲に旅に出る人がちらほらいて、私自身も2月に娘の短期留学を理由に20数年ぶりに強引にイギリスに行ってきたこともあり、なんかもう「外」に出たくてうずうず。
そんな折、仕事のことで打ち合わせした女性カメラマンAさんが、1人でクロアチアとネパールと北インドに行ったなんて言うもんだから、打ち合わせ15分、旅話2時間15分という時間を過ごし、それでも話し足りないので、こりゃもうこの続きはプラハに行ったあの子と、ポルトガルに行く予定のあの方も誘って今度あの店で飲んで語ろう!なんてことになってしまったので、私の心に完全に火がついた。
ところで、遡ること25年前。
2001年つまり21世紀とやらを目前に控えたあの頃、世の中は何となく不穏な空気が流れていた。ノストラダムスの大予言なんて信じちゃいないけど、地下フィルターも気になる。水って何リットルくらい買いだめしておいた方がいい?いやいや、何にも起こらないっしょ。いやでも、21世紀が始まるんだよ?何が起こるかわからないってば。みたいな
そんな中、そういえばあの時も私の周りには「旅」というワードが飛び交っていた。友人宅で酔って首都当てクイズ(ただ、国の名前を誰かが言ってその国の首都を言い当てるだけ。これが酔ってると妙に面白かった)で盛り上がるような仲間たちの中から、1人はイスラエルのキブツにボランティアとして1年間旅立ってしまい、もう1人はイタリアに行って彼氏を見つけてしまった。私は旅の予定もなくただ仕事をこなしている日常の中で、ある情報誌に掲載されていた女性一人世界一周の旅の記事に釘付けになった。
バックパックと呼ばれるリュック1個背負って旅をする“バックパッカー”。その言葉を初めて知って想像は膨らむばかり。そしてそのバックパッカーである彼女が「旅の茶話会」なるものを開催し、自らの体験を語るだけでなく、いろんな旅人の情報交換の場として茶話会を開催しているとのことで、早速飛び入り参加することに。旅の玄人から、旅初心者で情報を得たくて参加する人、旅はできないけど気分を味わいたい人、怪しげな目的で毎月一度東南アジアに飛ぶサラリーマン等など。
毎回誰か1人がプレゼンターとして自分の旅について話をして、その後みんなでわあわあ語り合う。これがたまらなく面白く、いつしかメンバーとして毎回参加するようになった。
そしてそのうち、
《21世紀ってやつを一人旅でスタートさせるのはどうかな》
と思いついてしまった。
思いついたが最後。上司に「21世紀に始めたいことがあるので、20世紀最後の日つまり2000年12月末日をもって退社します」と言いに行き(当然呆れられた)、あれだけ大好きであれだけ責任もって任されていた仕事をあっさりを捨て(本当に申し訳ない。この気質を次女が受け継いでしまった)、私の頭は旅一色に。
旅の茶話会の皆さんのお知恵も拝借し、私はヨーロッパを鉄道で3ヶ月間バックパッカーとして旅することに決めた。航空券などの手配やらなんやらかんやらで出発は2001年1月11日。勝手に21世紀らしいじゃないかと満足して、真新しいKarrimorのバックパックを抱きしめて夢をふくらませた。
そう。あれは26歳の時のこと。
小説「深夜特急」で、沢木耕太郎が旅する適齢期だといった26歳。私の中で確信があった。
今しかない と。
